三溪園通信
歴史的建造物を遺す
2023.03.06
木造が主となる日本の歴史的建造物は、一定のサイクルで修理や造り替えを行うことで、その形や構造、そして技術が伝承され現在まで受け継がれている。伊勢神宮や春日大社などで行われる式年遷宮、式年造替はこれにあたる。
多数の木造建造物がある三溪園でもこのご多分に漏れず、約30年ごとに大規模な修繕が繰り返されてきた。
戦後財団の管理となってから三度目の修繕が目下実施中で、三重塔と並び園を代表する臨春閣を皮切りに、旧東慶寺仏殿の2棟の修繕が進行中。年内には月華殿がこれに続く。
2020年、ユネスコの世界無形文化遺産に「伝統建築工匠の技―木造建造物を受け継ぐための伝統技術」が登録された。木工・屋根葺・左官・畳・建具など一七件にわたる日本の伝統技術が類なき価値を持つものとして評価されたのである。
三溪園でもこの伝統技術が発揮されていることはいうまでもない。
ただ、今回の工事では修繕と併せて最新技術による耐震補強工事が加えられている点が従来と異なる。日本庭園の中に建造物がとけこむように配置されている三溪園では景観への配慮も怠れない。大部分が襖や障子で構成されている数寄屋風書院造の臨春閣では、特に綿密な配慮がなされた。
2022年9月17日~25日の修理完了記念の内部特別公開では、5年もの歳月をかけてよみがえった臨春閣のそのままの姿とともに、この耐震補強の工夫にもぜひ注目いただきたい。
特別公開では洗練された内部の意匠とともに、庭園の眺めもみもの。
(220703よこはまなか区版寄稿)